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キャンプ

2000/05/10


伊豆の山奥のキャンプ場に出かけました。

そのキャンプ場の真ん前には滝へ降りて行く道あります。
この滝は、この地域の数少ない観光スポットなので昼間はかなり数の観光客が来るのですが、山の奥なので夜は非常に寂しい所となりますが5月連休や夏の期間はある程度の時間まで賑やになっています。

午後8:00を過ぎるとキャンプ場の売店や管理棟の人たちは家に帰ってしまうので各テントのランタンの光や街灯のほのかな明かりのみが夜の闇を遮る明かりとなりますが、連休中とあって、家族連れや若者達、更には、ボーイスカウトのキャンプもあり夜になっても賑わいは収まりませんでした。

午後9:00を過ぎると周りもだんだん静かになりテントからのランタンの光もポツポツと消えて行きます。

「そろそろ、滝に行こうか。」

2人の友達と来ていたのですが1人の友達からの提案がありました。

「嫌だよ。なんで。」
「肝試しだよ。」
「1人づつか」
「いや、怖いから3人で行こう。」

言い出しっぺも、恐がりなので3人で懐中電灯の明かりを頼りに自分たちのテントから滝へと向かいました。

滝への坂道は街灯もあり懐中電灯も不要なぐらいでした。
又、滝壺の方からは賑やかな子供達の声が聞こえます。

滝壺の所までたどり着くと、轟音を放ちながら落ちてくる滝の姿がライトアップされて浮かび上がっていました。その神秘的な綺麗さには驚かされました。

滝の周りには、ボーイスカウト(カブスカウト)の子供達が沢山いてみんなでワイワイと何かに群がっています。

「カエルだよ」

見ると、20cm弱の大きなカエルを何人かが手に重そうに持っています。
滝壺の周りには沢山のカエルがいるようです。
自分たちも おっかなびっくり カエルをつついたりしていました。

暫くして、何気なく滝の方を見ると滝の向こう側で誰かがこちらを見ています。
昼間に行ったときに分かったのですが、滝の横から滝の裏側を通って向こう側に行けるようになっていて、ちょうど滝壺を一周できるようになっています。
但し、飛沫でぬかるんだその道を夜歩く人はまずいません。

「滝の向こう側に誰かいるよ。あぶねえな。」
「えっ。どこ?」

友達は分からないようでした。でも、その人は確かにこちらを見ています。滝の裏側から顔だけ出している様に見えます。
そのうち、隊長の号令で子供達はカエルを水辺に戻して帰っていってしまいました。
辺りは、滝の落ちる轟音のみとなり音的には十分なのですが寂しい感じが全身を襲います。

再度、滝の方に目を向けましたが、さっきの所には人はいません。見間違いかと思い友達に、

「さっき、滝の向こう側に人がいてこっちを見ていたのになぁ」
「...」

友達2人は、滝の上の方を見ています。
私もその方を見ました。そこには、滝が落ちてくる一番上の所の岩の上に正座した人がいました。男か女かわよく分からないが自分たちを見下ろしています。

1人が逃げ出すと自分も物凄く怖くなって坂道を駆け上りました。
後ろを振り向くとスローモーションの様な感じで白い着物の足下をはだけて追いかけてくる姿が見えます。
生きた心地がせず無我夢中でテントに戻り寝袋に戻ってふるえていました。

逃げてる途中、回りのテントは全部就寝しているのか、全て真っ暗になっていました。
かなり大声を上げていたと思うのですが、不審に思った人達がテントから出くる様子も有りませんでした。

「ザッ、ザッ、ザッ」

自分たちのテントの近くへゆっくりと走ってくる足音が聞こえます。3人とも寝袋に頭までかぶってぴくりともせずにジッとしていました。
そして自分たちのテントの前まで来て足音が止まりました。
数分間の静寂が続きます。でも、外に誰かいる気配を感じているので体を動かすことができません。

そのうち、テントの周りをクルクル回りだしました。 何時間経ったか分かりませんが、足音が聞こえなくなり外に誰かいる気配もなくなりました。

「あれ、何だろう。おばけかなぁ。」

友達の一人が静寂を破りました。

「俺さぁ。トイレにいきたくなったよ。付き合ってくれる。」

自分も何故か尿意を覚えていたので、

「良いよ。でも、大丈夫かな」

そーと、テントの入り口のチャックを少しだけ上げ外を覗きましたが誰もいません。

「大丈夫みたい」
「早く行こう」

チャックを上げ四つん這いになった状態で上半身をテントから出しました。すると頭の後ろから異様な気配を感じました。思わず振り向くと、そこにはテントの上に乗ってこちらを睨んでいる白装束の男がいました。

「わーっ」

再び、テントの戻り、

「この上にいるよ。」

小便は我慢し3人寄り添って震えていました。

長い時間が過ぎ、テントの回りから楽しげな話し声が聞こえてきます。
最初、さっきの奴が自分たちを騙そうとしているのではないかと思いましたが、何となく雰囲気が違います。

「今何時か分かる」
「あれ、10時だ」

少なくとも、滝から逃げてきてから4時間以上経っていると思っていたのですがテントから滝に向かったのが9時半位だったので30分ぐらいしか経っていません。

「時計壊れてるんじゃない」
「俺のも、10時だ」

もう一人の友達の時計も10時でした。
再度、恐る恐るテントから外を覗くと回りのテントの人たちがランタンの灯の前で話をしたり、酒を飲んだりしていました。
テントの外へ出ると楽しげな雰囲気のいくつかのグループが見え普段通りの楽しいキャンプの夜の風景でした。

「夢でも見てたのかな」

納得しないまま、とりあえずトイレを済ませテントの中で酒を浴びるほど飲み就寝しました。

翌朝、

「昨夜の事は夢かな」
「そんなことは無いよ。」
「確かに、滝まで行ったし、ボーイスカウトの子供っちもいたじゃない」

それでは、確認しようと言うことになりボーイスカウトのいる場所まで行き昨夜9:00頃滝に行ったか確認に行きました。しかし、

「うちの消灯は、9時ですから滝に行くはずが有りません」

と言う回答でした。

あれは、何だったのでしょう。
自分達は夢を見ていたのでしょうか。3人そろって。
それとも、よく言われる”ダークサイド”へ行っていたのでしょうか。

<友貴さん>