運送屋のトラック
先日、彼女と2人でドライブに行った時です。
町中から綺麗に舗装された2車線の峠道へと向かいました。曲がりくねった道を上ると、宅配便のトラックが前方に現れました。追い抜こうとしますが曲がりくねった道の為追い抜くことができません。仕方がないのでトラックの後を走っていました。
最初気が付きませんでしたが、トラックの後ろの観音開きのドアの鍵(止めるもの)が掛かっていなくて後ろのドアが、カーブを曲がるたびに空いたり、閉じたりうぃ繰り返しています。下りになった頃から、ドアの開閉が大きくなり荷物もポロポロ落ちてきます。ガムテープや小さな転がりそうなものがドアの隙間から落ちてきます。
「後ろのドアが空いてるよ」
「教えて上げたら」
「次の信号に止まったらね」
暫く走りますがなかなか信号が有りません。そのうち、チラッと小さな手が見えました。
「あれ」
よく見ると、その小さな手がトラックの荷物の小さな小物を落としているように見えます。
「後ろの荷台に子供が乗っていないか」
「えー。ほんとに」
2人してジーと観察しました。すると、小さな足も見え靴が脱げて道路に落ちて転がって行きました。
「いるいる。靴が脱げちゃったよ。早く教えて上げないと危ないよう」
その場で、クラクションをなわしたり、少し対抗車線にはみ出してパッシングしたり色々教えてあげたのですが、前のトラックは止まりません。暫く、この状態が続来ました。やっと、信号機が有り前のトラックは止まりました。それでも降りてこないので、再度クラクションを鳴らすと若い運転手が怪訝な顔で降りてきました。
「後ろのドアが開いていて荷物が落ちているよ」
と知らせてやると、納得したのか普通の顔に戻って
「ありがとうございました。最初嫌がらせだと思って止まらなかったんです。」
と言って、荷台を調べドアを閉めました。そして、再度、お礼言いに近づいてきた時に
「あれ、後ろの荷台に子供が乗ってたよ。そのままで良いの」
「えっ、いませんよ」
「でも、子供が荷台の小物を落としたりしていたのが見えたよ。なー。」
「わたしも見た見た。」
再度、怪訝な顔をして観音開きのドアを大きく空けました。中には、びっしり荷物の箱が詰まっていて、子供でさえも入る隙間が有りませんでした。
「そんなことは無い、俺見てくる」
と言い外に出ようと思いましたが、
「止めようよ。なんか変だよ」
と彼女に止められ確認するのを思いとどまりました。
「ねっ、いないでしょ。」
「ほ、ほんとだね」
「本当に、ありがとうございました。」
運転手は再度感謝の意を述べ走り出しました。
「確かにいたよな」
「...」
彼女から返事が有りません。彼女は前を見ています。私も、再度前のトラックを見ました。すると、閉まっているトラックのドアから小さい手が出ていました。
前のトラックと異常なほど距離を置いて、峠道を下り終えました。 今だにあの手の意味が分かりません。トラックの運転手もそんな事はつゆ知らずと行った感じでした。あれは何だったのでしょうか。