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偶然

 


 

幽霊とかの話しでは無いのですが3日間にいろいろな出来事に遭遇しました。

いつだったか忘れましたが、家族4人で九州の別府へ旅行に行った時の事です。
初めて乗る寝台車に兄と2人で大はしゃぎでした。車内食堂で食事を済ませ、初めての列車内の宿泊にわくわくして就寝しました。翌朝、物凄い揺れで目が醒めました。何かアナウンスされている様ですが寝起きの為内容はよく分かりませんでした。
数十分間停車後、走り始めました。暫く行くと、真っ赤なシーツにくるまれた物体の回りに沢山の作業員が集まっていました。

「何が有ったの」
「人が轢かれた様だよ」

と父親が言いました。初めて列車の人身事故でした。嫌な気分になりましたが、旅行中のこと、すぐに忘れてしまいました。

別府に着き、昼間は、地獄巡りとか言う場所があり、赤い色の池”赤池地獄”とか”XX地獄”とかを見物してでホテルに戻りました。時間は、19:00位だったと思います。

「風呂に行こう」

と温泉ホテルの大浴場ですから2人はかなり期待して風呂場へと出かけました。
脱衣所に入ると、ものすごい湯気の為前がよく見えない状態でした。
一度、浴室を見てみようと脱衣前に風呂場に入りました。風呂場は、脱衣所にもまして湯気が立ちこめ1m前がかろうじて見えるような状態でした。

「すげー、湯気だなぁ」

と言って、浴槽に近づくとそこには浴槽に入って背を向けた男の人が入っていました。ビックリして脱衣所に戻り衣服を脱ぎ出すと

「どたどたどた」

とホテルの従業員5.6人が入ってきました。一人は浴室に入って行き、しきりと先に入っている人に声を掛けています。
どうも、高齢の方で、風呂場で亡くなっていたようです。

「申し訳有りませんが、外に出てください」

と言われ風呂に入らず部屋に帰りました。

「あの人死んでいたみたいだね。おれ、初めて見た」

と興奮して兄に話しました。

その夜の、食事は、注文していない”船盛り”が出たり、その他の料理も食べきらない程豪華なものに変わっていました。家族4人、

「良かったね」

と不謹慎にも思ったものです。
食後、再度風呂に行ったのですが、男湯と女湯が逆になっていました。

翌朝は、あわただしい雰囲気で目が醒めました。サイレンの音、人のざわめき、鼻につく臭い。母親が、

「早く着替えて、火事。火事。」

と言ってせかされました。
道路を挟んだ20m位前のビルで火災が発生していました。
着替えながら、窓越しに見た光景は、間近で見る初めての火事の現場でした。

「おれ、こんな近くで火事見たの初めてだよ」

と感動して、避難しました。

この様に、列車事故、風呂場の水死体、火事と短期間に体験しました。

「帰りは無事に帰りたいね」

と少し心配そうな母親に、

「大丈夫だよ」

とみんなで励ましました。

その後の旅程は無事に進みました。

「何もなくて良かったね」

と言いながら、帰りの寝台車に乗る為駅に行きました。が、何故か国鉄(この頃は、JRでない)のストが始まり、駅で6時間ほど立ち往生をしました。

こんなに沢山の出来事に遭遇すると何かの力で故意に不思議な偶然が重なった様に思えます。
但し、一家4人は何事もなく無事に帰路に着く事ができました。

思いで深い旅行となりました。