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夏の思い出

 


夏の夜は軟派に明け暮れます。

その夜も、

「行くぞー」

と悪友と2人で、伊豆高原の別荘地に車を飛ばします。
夏の夜は、県外からペンションや別荘へ来ている若い女の子がそこいら中にいます。
海辺での花火が多いいのですが、この別荘地にもたくさんの女の子(男も多い)がいました。

何人もの女の子達に声を掛けましたが収穫は有りませんでした。

「灯台のとこに行こう」

2人で灯台の駐車場まで車で行き、そこから徒歩で灯台へと向かいます。駐車場には同じ様な目的を持つ車がかなりいるので夜の暗さも余り気になりませんでした。
駐車場から灯台までの道は木々が夜空を覆っていて月明かりも入らず真っ暗となります。前方の灯台の明かりを頼りに灯台へと行きましたが、アベックばかりで2人組の女の子はいませんでした。

「吊り橋まで行ってみようか」

伊豆高原の吊り橋の有る場所は切り立った岸壁にあります。岸から向こう岸まで20m位の長さの吊り橋です。
海面からも20m位の高さに掛かっているので昼間は下が見えてかなりスリルの有る場所です。
夜は、下がよく見えませんがその高さは知っていますし波の砕ける音や風の音を聞いていると一段と怖さがまします。
少し嫌な感じでしたが、若い女の子の魅力がその気味悪さを越えていたので女の子を求めて吊り橋に向かいました。

吊り橋に乗る直前で、

「おい、あそこにいるようだぞ」

向こう岸に女の子らしい人影が見えます。

「行こう」

吊り橋を渡り人影がある方へ向かいました。

「2人組だよ」

喜び勇んで近づき声を掛けました。

「どこから来たの」
「東京から」

明るい笑顔の可愛い女の子でした。

「どこに泊まってるの」
「お父さんの別荘」

たわいのない話をし盛り上がっていました。

「こりゃ、いけるかも知れないな。俺、小さい方の子な」
「OK」

2人は、お互い納得し別々に連れ出そうと計画を立てました。

「ちょっと、散歩しようよ」

友達が、背の小さい子を誘います。

「じゃ、俺達も」

と2人はそれぞれ分かれて反対方向に歩き出しました。

どこの暗闇に連れ込もうかと思っていましたが、ふと後ろが気になり友達の方を見ました。2人仲良く歩いています。が、よく見ると、その女の子は裸足で歩いています。

「あれ?」

自分の連れの女の子の足下を見るとその子も裸足でした。はいているスカートは綺麗でない様に思えました。

「どうしたの。ふふふっ」

その子が薄笑いを浮かべて私に言います。

それを聞いて、ゾーとしました。
何か変だ。友達を呼びます。

「おい、ちょっと来い」

友達は振り返りましたがなかなか来ません。

「いいからすぐに来い」

その時、連れの女の子は私の腕に自分の腕を組みました。少し嫌な臭いがしました。

「ちょっとはなしてくれ」

腕を振り払い、友達を呼んで、

「この子達裸足だぜ。なんか変じゃない」

友達と2人で女の子達を見ました。女の子達は、こちらを見ながら含み笑いをしています。

「今日は帰ろう。」

納得できない様な友達に真剣な目で訴え

「今日は、都合が悪いから帰るよ」

と女の子達に言い、急いで灯台の方向へ向かいます。
後ろを向くのは怖いので早歩きで吊り橋を渡り、渡り終えた後、後ろを振り返りました。
すると、断崖絶壁の縁に設置してある欄干の上に乗って踊っている女の子達の姿が見えました。

「おい、見ろよ。あんなとこに居るよ。落ちたら死ぬぞ」

と言っているうちに2人は、海に落っこちてしまいました。
驚いた私たちは、もう一度吊り橋を渡ろうとした時、吊り橋の中間にその2人に女の子が含み笑いをして立っていました。

「わぁぁ」

急に怖さが増し友達と2人で転げるように駐車場まで逃げました。
駐車場に着くとさっきまであんなにたくさんいた車は無く友達の車がポツンと1台有るだけでした。
急いで車に飛び乗り発信しました。

ホッと一息つき、後ろが気になったので振り返るとあんなにダシュシして走ってきたのに灯台に行く道の所にあの子達が立っていました。

あの子達は何者だったのでしょう。この世の人では無かったのでしょうか。
確かに海に落ちたのを見ました。
あの暗い中で吊り橋の中央にたった子達の含み笑いの顔がよく見えたのも印象的です。

その後、軟派場所として夜の灯台や吊り橋には近寄っていません。夏の夜の不思議な体験でした。


<Jomさん>