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監視所

 


高校1年の夏休みは、海に設置されている監視所にアルバイトに行きました。

ほとんどはのんびりと椅子に座って海をぼんやり見ているのですが、週に何回かは大人、子供関係なく溺れます。
同じ場所にお巡りさんも居るのですが制服を着ているので救助に行くのは僕たちです。

救助に向かう時は、2手に分かれ1手は手漕ぎボートを出します。もう一方は、泳いで救助に行きます。たいがい、泳いで行く方が早く相手のところに付くことができます。溺れた人たちは、救助後、海水をたらふく飲み”げほげほ”いいながら砂浜で苦しそうにしていると言うことが大半で大事に至ることはほとんど有りません。

ある日、望遠鏡で監視してい奴が、

「子供が溺れている。結構沖だ。」

全員で、救助に向かいます。この時は、かなり距離が有り、子供は海面から姿を消してしまいました。僕たちが到着した時は、海面から3m位の海底にその子供は眠っていました。その子供をボートに上げ、急いで陸に上がり人工呼吸等を施したが息は吹き返しませんでした。その後、お巡りさんが呼んだのであろう救急車が来て、その子供を連れて行きました。

僕たちは、全員泣きました。お巡りさんは、

「余り気にするな」

と言いますが、僕たちのショックはかなりのものでした。

5時になると監視所も閉まります。帰りの準備をしている時、監視所の数メートル前を行ったり来たりする子供がいます。僕は余り気にしなかったのですが、一緒にいたお巡りさんが、

「お前達、早くした支度して帰れ。」

と急かせます。帰り支度をして外を見るとさっきの子供は波打ち際の方まで移動しています。その時、

「あぁ。あの子、さっき子じゃねえか」

よく見ると、見覚えのある水着を着たその子はこちらを見ています。僕たちは、蛇に睨まれたカエルの様にその場に立ちつくしていました。

「早く帰れ!」

お巡りさんの怒鳴り声に我に返った僕たちは急ぎ足で家路に向かいました。

次の日、お巡りさんに

「昨日の子は、死んだ子に似てましたね」

とさりげなく聞きました。 お巡りさんは、嫌な顔をして暫く黙っていましたが、

「たまに有るんだよな。特に小さい子供の場合は、分からないんだよな」
「何がですか」
「前にもあっただけど、昨日と同じように子供が死んだとき帰り際に死んだ子を見たんだよ。その時は、お前達と同じバイトの子が危ないめにあったんだ」
「危ないめって?」
「....」
お巡りさんは、黙ってしまいました。その後、この話をするのはバツが悪くそれ以上話は出ませんでした。

お巡りさんの口ぶりから海では不思議な事がよく起きる様です。

でも、”危ないめにあったんだ”が何だったのか気になります。