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冷川峠   

 


伊豆の中央部から東海岸の伊東方面へ行く為の峠道の一つです。

修善寺、中伊豆町を通り伊豆スカイラインの料金所の前を通り越すと信号機が有ります。その信号を右に曲がると中伊豆バイパスとなります。この信号を右に曲がらずに真すっぐに進むと冷川峠となります。

この峠は、車で30分位かけて伊東に向かうのですが途中街灯など何もない山の中を走って行くことになります。中伊豆町から伊東市に入るとゴミ焼却場、陶芸家の家やHONDAの研修所が現れますがそれ以外は伊東市街になるまで右側に何十メートルもの崖のあるの1車線道路を走ることになります。
この道は、四季に関係なく霧が発生します。霧が深い時は、昼間でも5m先が見えない状況になります。この道を午後9時頃伊東方面に向かって車を走らせていた時のことです。

この日も、霧が深く、更に霧雨の降っている夜でした。いつもの様にガードレールや道路の横に引かれている白いラインを頼りに車を走らせていると右側の視界のギリギリのところで何か動いた様な気がしました。
この道を通るときは、少し怖いので横の窓、バックミラーをはじめ、フロントガラスからは山の木立の間、草むらは極力見ない様にしています。
でも、何かが ”いる” 感じがします。”絶対横は見ないぞ”と心に決めますが、右への急なカーブの時はどうしても顔が右側を向いてしまいます。その時、目が合ってしまいました。女の人でした。私は、ダッシュで車を走らせますがその人は車の横から離れません。

「ふふふっ。」

これでもかと言う位に不気味な笑い声が車内に響きます。

とっさに、

「父と子と精霊との皆によりて、アーメン。めでたし....」
(注:クリスチャンではないですが、幼稚園がカトリック系だったのでお祈りは出来ます。)

と唱えました。

すると女の人の何とも言えないか細い声で、

「何言ってるんの。馬鹿じゃない。ははは..」

この言葉を最後に、消えてしまいました。

今考えると、とっさのお祈りが ”南無阿弥陀仏”とかでなく西洋のお祈りだったので良かったのかなぁと思っています。
あの時、”南無阿弥陀仏”などと言っていたらもっと違った展開になっていたのでしょうか。

最後の笑いは、僕のお祈りに対して、”意表をつかれた”とか”呆れた” とかの笑いだったのでしょうか。