戻り


世界で二番目の男

不思議な夜

娘 続編

お墓参り

ジョギング

心霊写真

山の怪

火の玉

狸囃子

老犬

あぜ道

謎のおじさん

監視所

旧天城トンネル

すりガラス

お稲荷さん

新居

冷川峠

一杯会

海水浴

亀石峠

カーブミラー

カミナリさま

懐中電灯

燃料タンク

錦が浦

お化けだよ 

たぬき

葬式

宇佐美峠

見知らぬ町並み





へ戻る









21話



Package 10

Package 9

Package 8

Package 7

Package 6

Package 5

Package 4

Package 3

Package 2

Package 1

不思議話へ戻る


旧天城トンネル

 


会社で残業をしていた時、先輩が

「肝試しやろうぜ」

と言い出しました。残業していたのは4人で、あれこれ肝試しをやる場所を考えました。

私の会社は静岡県の伊豆に有ります。

「天城の旧トンネルにしよう。」

と伊豆の踊り子で有名な旧天城トンネルへ夜の9時頃車で向かいました。 修善寺から天城湯ヶ島を通って東伊豆へ向かって行くと手前を左に入る道が有ります。そこは舗装されていない幅4m位の山道です。その山道を登って行くと途中八丁池へ行く道などがあります。そこを通り過ぎ道なりに進んで行くと旧トンネルが現れました。

到着すると、トンネルの入り口右側に無人の茶店(既に終わっている)が真っ暗のなか不気味に立っています。到着して、数分間全員何も言わずにトンネルを ボー と眺めていました。車のヘッドライトに照らされたトンネル入口は非常に幻想的でした。又、立ちこめる霧が(少し霧が出ていた)トンネル内に吸い込まれて行く光景は自分たちも異次元に吸い込まれているような錯覚に陥ります。

数分がたった頃、誰からともなく

「やっぱ、外に出なきゃな」

全員、外に出ました。外に出ると車の中で見る以上に不気味です。霧は相変わらずトンネルの中に吸い込まれて行きます。ここで疑問が浮かびました、なぜ霧は、山の上、又は、谷の方へ流れずにトンネルの方へ流れて行くのか。でも、余計なことを考えるのは怖いのでそうゆうものだと自分に言い聞かせてトンネルの中を覗きに行きました。

トンネルの中へ向かう風は全く吹いていません。霧は、どんどん中に吸い込まれて行きます。自分の体もトンネルの方へ引っ張られる様な気がします。他の3人も同じ様です。

「気味が悪いからこの辺で終わりにしようか」
「うん、帰ろう」

と言うことになりました。が、一人が急な腹痛を訴えトイレに行きたいと言い出しました。トンネルの入り口の茶店にトイレが有ります。電気はついていません。自分だったら絶対入らないと思いますが、その同僚は、せっぱ詰まっているのでしょうかどうしても入ると言ってトイレに駆け込んで行きました。

外に立っているだけで頭がジーンとしてなにやら切ない様な気分になって来ます。同僚には悪いのですが、私たちは、車の中で待つことにしました。車内で一息ついて、又、トンネルをボーと眺めていました。5分ぐらいしても同僚はトイレから出てきません。

「あいつ来ないなぁ。お前見て来いよ」

先輩からの要請で私ともう一人でトイレを見に行きました。トイレの中は真っ暗です。

「おーい。○○」

トイレの外から呼びますが返事が有りません。仕方がないので、中に入りました。ライターの明かりを頼りに中をうかがうと大便の方のトイレは閉まっています。

「居るか?」

返事がないので、ドアを開けようとしましたが鍵が掛かっています。私たちはトイレの戸をたたき

「おい、○○、○○。出てこい」

と叫びます。すると、”ガチャ”音とともにドアがスーと開き、同僚出てきました。同僚は、私たちに目もくれずトイレから出て行きます。そして、車に戻らず私たちが上ってきた真っ暗な道を一人で走って下って行きます。驚いた私は、車に戻って先輩を呼び先輩は車をUターンさせ車を出し私たち2人は、その同僚追跡しました。するとその同僚は道の途中で立ち止まっています。

同僚のそばにくると同僚は道の左側を見てニヤニヤしています。その方向には何かの銅像の様なものが立っていました。私は夢中になってその同僚を正気の戻そうしました。すると、もう一人が、

「早く車に戻ろう」

と言い一人で車に乗り込んでしまいます。私も気持ち悪くなり同僚をほっといて車に戻ろうと思いましたが、やはり 見捨てることが出来ずその同僚を抱え上げて車に乗り込みました。車は、山道を下って行きます。私は、

「なんか分けわかんないけど怖かったな」

すると

「さっき、○○が立ってたとこに銅像があったろ。あの銅像の後ろに綺麗な女の人がいて銅像の肩に両手を乗せてお前達の方を見て笑ってた。お前は背を向けて気が付いていないようだったけど、俺は見たんだ。そしてお前達の方を見ていた女が俺の方を見ようとした様なので車に逃げ込んだんだ」
「えっ、ほんとに」

私は全然気が付きませんでした。運転している先輩は、

「ソバージュの女じゃねえか。」
「そうですよ。見ましたか」
「頭の中でお前の言った光景が脳裏に浮かんだんだ。あの女、そいつが気に入ってたみたいだぞ」
「お払い方がいいかな」

などと話していたとき、左手窓から見える崖の木々の間からたくさんの目(赤い目の様なもの)がづっと車に付いて来ている様でした。

「お前あれ見える」
「俺は、怖いから外は見ないぞ」

見てくれません。私も怖いので、真っ直ぐ前を見るようにしました。 そうこうしているうちに、国道に付きました。もう一人は、この頃、正気に戻りました。

「あれ、もう終わったの。」

聞くところによると、トイレには行って用を足しているとなんかいい気分になって真っ暗なトイレで用を足しても何にも気にならなかった。その後の記憶がまるでないと言うことでした。

先輩は、町中に来るとセ○ンイレブンに車を止め

「こう言う事があると、車に手形とか付いているかもしれないからちょっと見てきてくれないか」

私達は、車から降り確認しましたがそのような形跡は有りませんでした。 その後、変わった事は起こりませんでしたが、夜の旧天城トンネルには2度と行かないことを誓い合いました。