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お寺

2000/07/30


この話は、私の祖父がよく聞かせてくれた話です。

怖い話ではありません。
ジャンル違いだと思っていますが聞いて下さい。

祖父が若い頃(昭和の初期)の話です。
祖父の家は農家の家で周りは山に囲まれた小さな村でした。
商店と言えば、村の唯一のよろず屋が一件有るだけでした。
ある時、友だちの母親から、

「Uちゃん、うちのHが夜中どこかに出かけて行く様だけど何か知らない。」

突然の質問に、

「知らない。」
「困ったねぇ」
「じゃあ、今夜、追跡してあげるよ」

と2つ返事で引き受けたそうです。
そのHは、胃腸が弱くいつも青白い顔をしたガリガリの男の子でした。

友達2人とその夜、Hの家の前で張り込みました。
前もって、Hの母親が祖父の両親に事情を話していてくれてあったので夜の外出もOKでした。
夜中の1時頃、Hが家から出てきました。

「おい、出てきたぞ。」

と祖父と友達は、探偵のように追跡していったそうです。
Hの行き先は、少し離れたお寺でした。
否が応でも雰囲気が盛り上がります。
祖父と友達は、だんだん怖くなってきました。
以前、なにかで読んだか、聞いてたかした話に、

”墓を暴いて、人肉を食っていた。”

と言うのが脳裏に浮かんだそうです。
祖父達は、恐怖感の絶頂でした。

「ど、どうする。」
「つっ、追跡だ」

とHの追跡を続けました。

おっかなびっくり、夜のお寺という雰囲気とHが何をするのかという恐怖感で一杯でしたが、勇気を振り絞って追跡しました。
Hは、お墓には行かずに本堂の裏手の方に向かって行きます。
祖父達は、静かぁに、Hに分からない様に近づいて行きました。
Hは本堂の縁の下に入って、乾燥した地面を手で掘っています。
その後、土の中の何かを

「ポリポリ」

と音を立てて食べ始めました。
祖父達は、容易ならぬものを感じて暫く黙って見ていました。
その時祖父は、

”あいつ、死体食ってる。”

と確信していたそうです。

その後、Hは5分も経たない内に地面を元通りに戻し、家に帰って行きました。
その場に残った祖父達は迷っていたそうです。

「どうする。あそこ掘ってみる。」
「やだ、死体が埋まってるかも知れない。明日にしよう。」

とその夜は各々自分の内に帰って、翌朝、Hの家に行こうと言う事になりました。

翌朝、Hの母親に昨夜の事を話、寺へ行く事になりました。

「まったく、あの子は。」

途中、Hの母親は泣いていました。
無理もありません。もしかしたら我が子が死体を食らっているかも知れないのですから。
お寺のその場所に着くと、まだ新しい掘り返した後は、直ぐに分かりました。

おっかなびっくり、その場所を掘ってゆきます。しかし、死体など出てきません。
唯一出てきた者は、白く乾燥した犬の糞でした。
Hの母親は、安堵しましたが、その犬の糞を持って

「Uちゃん、ありがと。」

と言って走って帰って行きました。
残った祖父達は、いったい何だったんだろうと思いましたがそのまま家に帰りました。

その日の晩、夕食が済んだ頃にHの母親がお礼に来ました。

「Uちゃん、ありがとね。ビックリしたでしょ。」

とその後の話をしてくれました。
あの後、犬の糞を持って、Hに問いただしました。すると、

「犬の乾燥した糞を食べると胃腸が丈夫になるって言ってた...」

と誰かから入れ知恵されて、

「お前の胃腸障害は犬の乾燥糞を食べれば直る」

と聞いたらしい。村には、病院など無かったので、薬草などを呑んでいたが余り効き目が無くその話に飛びついたらしい。
しかし、昼間、犬の糞を食べるのをみんなに知られると恥ずかしいので夜、こっそり隠してあった犬の糞を食べていたと言うことでした。

医学的な効果の程は分かりませんが、自分自身は何となく調子が良くなっていたそうです。

勿論、Uの母親は、

「そんなことをしては、駄目。」

とその行為を禁止したそうです。

祖父が言うには、

「夜中に目撃した時は、死体を食べていると思って怖かったが、後で判明した、犬の糞を食べていた方が強烈に気持ちが悪かった」

と言っていました。



お孫さん