クリスマスの夜
2000/06/12
これは、先輩に聞いた話です。
先輩には、可愛い彼女がいて最低でも週一回は2人の愛を確かめるため東名高速の沼津インターのラブホテルに通っていました。
ある冬のクリスマスの夜、東名高速インターのラブホテルは超満員で仕方なく郊外のラブホテルを探す為、東海岸沿いの道を南下して行きました。
車を走らせているとある町の海岸沿いのトンネルの出口付近に1件のラブホテルの看板を見つけました。
その看板を頼りに脇道に入りガタゴト道を暫く進むとラブホテルが現れました。
今流行の若者向けのきらびやかなたたずまいではなく、昔風の看板だけがけばけばしいビジネスホテルの様なホテルでした。
「あっ、空室が点いてる。」
ラッキーな事に、空室が有るようでした。
早速、駐車場ののれんをかき分ける様に車を進めると何台かの地元ナンバーの車が止めてあります。
自分たちの車を止め、ホテルの従業員の胸元しか見えないカウンターで部屋の有無を確認して泊まりの料金と引き替えに部屋の鍵を貰い2階へと行くためにエレベータに乗り込みました。
2階に着くと正面の案内を頼りに赤いジュータンの上を自室へと進みます。
部屋の中に入り、まず彼女がシャワーを浴び、入れ替わるように先輩がシャワーを浴びたそうです。
「何と無くやだね。」
彼女が”ぼそっ”と呟きました。が事の前と言うことも有って先輩は気にしませんでした。
深夜、3時頃、ほとんどのホテルでそうですが、エアコンで部屋中が乾燥し、喉が非常に乾き冷蔵庫からビールを出して、ベットを背に電気の入っていないテレビをぼんやりと見ていたそうです。
暫くして、真っ暗なテレビの画面に、ベットからムクッと起きあがる彼女が映りました。
先輩は、後ろを振り返らずに、
「ごめん。起こしちゃった。」
彼女の為に、テレビも付けないで静かにしていたはずだったのですが、彼女は後ろを向いたままベットの上に正座の足を崩したかたちでうなだれた様に座って返事をしません。
先輩はそのままビールを飲み続け飲み終わってから、ベットの方を振り返りました。
ベットの上の彼女を見た時、うなだれながら方を震わせています。”泣いているのかな”と思った先輩は、
「どうしたの。」
と彼女の方をそっと抱きました。
「何かあったの?」
彼女の返事がありません。
先輩は、彼女の顔を覗き込みました。
「わっ」
とっさに、彼女から飛び離れました。そこには、目を見開いて、
「くくくくくっ」
と笑いを押し殺した表情の彼女がいたからです。
「なんだよ。気持悪りいいな。」
と言った途端、キッとした表情で彼女が睨みます。
「おまえは、誰だ。」
彼女とは思えない男性のだみ声で先輩に話しかけます。
「お前は、誰だ。」
2度目の時に、あまりの怖さで彼女の顔面を力一杯殴ったそうです。
彼女は、ベットに倒れ込み鼻血を出しながら、
「何するのよぉ。」
と大泣きで激怒したようです。
その日は、彼女の気持ちが収まらず朝で一言も口を利いてくれずに朝を迎え家まで送っていったそうです。
当然、彼女からの電話で一方的に別れ話をされた先輩は色々謝罪などをしましたが結局は彼女の気が収まらず別れてしまいました。
その時の男のだみ声の事も信じてもらえずに。
その後、先輩が私の家に電話してきて、
「分かれちゃったよ。」
「あんなに仲が良かったのにどうしたんですか。」
「お前の地元の○○てホテルに泊まった時、...」
と今お話しした話をその時に聞きました。
「先輩、あそこのホテルは出るんですよ。」
地元でも有名なホテルでした。
「やっぱり出るか、おやじか?」
「いえ、女のおばけですけどね」
と先輩の話しの内容は地元の噂とほとんど同じだが、地元の噂では女性の怒った声だったので少し違いました。
が、貴重な体験談と言うことでお話ししました。
「ラブホテルに行くときは、一応、お守りは持参する方がいいですね。」
と2人納得して教訓としました。
みなさんもラブホテルに行くときはお守りを持参することをお忘れなく。
<totoさん>