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ホタル

2000/07/22


蒸し暑い夏の夜、7時頃、

「おとうさん、ホタル採りに連れてってよ。」

幼稚園児の息子にせがまれ、少し離れた山間の田んぼへと出かけた。
舗装された道路に車を止めて、田んぼのあぜ道を2人で歩いて行く。

暫くすると、あちこちに青白い小さな光が不規則に動き回っている。

「あっ、いた。おとうさん早く採ってよ。」

息子に言われなくとも童心に帰ったように夢中でホタルを何匹か捕まえ始めた。

「沢山、取れたね。」

息子は満足そうな顔をしている。

「そろそろ、帰ろうか。」
「えー、もっと、採りたいなぁ。」
「じゃあ、最後の1匹採ったら帰ろう。大きいのを探してね。」
「うん。」

2人は、目を凝らして周りを見回した。

「おとうさん、あれが、大きいよ。」

あぜ道の先の方に少し大きな青白い光が漂ってた。

「行くぞ。」

その光を追って歩き出した。

2メートル、5メートルと進む内にその光は、だんだん大きくなってゆく。
更に進と、こぶし大の大きさになってしまった。
その光が大きくなって行くのではなく、自分たちが近づいて行くに連れてその大きさが判明したと言う方が正しいと思う。

息子の手を引っ張って今来た道を夢中引き返した。

「何で、採らないの。あんなに大きいのに。」
「今日はもう帰ろう。」

そう、ホタルだと思っていた青白い光は、火の玉だったからである。
始めて体験だった。

ホタルの光と似ていたが、炎の様な青白い光が揺らめいていた。

生まれて初めて見る火の玉だった。
あの感じからすると、あの炎は、きっと熱を持っていないと思う。