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16話



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臭い奴

 


小学校当時は、私たちの遊び場としてはそこら辺に空き地が有りみんなして遊んだものです。

年上の子は、私たちを奴隷の様に可愛がってくれ、空き地に集まった子供達は自然に1つに集まって、年上の子の指示の元、”鬼ごっこ”をしたり”隠れんぼ”をしたりして楽しい1日を過ごしました。

学区内でも(小学校の頃は、縄張りまでは行かなくとも学区内遊んでいました。学区を出ると違った町の様に回りにいる子供達、その場の雰囲気が違っていました)町から少し離れると空き地の数、規模の大きさ等格段に違ってきます。
又、空き地の他に畑が多く見られるようになります。
基本的に暗黙の了解で畑には入ることは禁じられていました。

ある日、友達とみんなで”隠れんぼ”をする事になりました。2度、3度と鬼が変わり楽しく遊んでいました。
何回目かの隠れん坊の時、

「たすけてぇぇ」

との叫び声がします。一時”隠れんほ”は中止してみんなを集め、

「○○がいないね」
「探そう」

と言うことになり、みんなで探しました。

「おーい、○○」

とすぐに、

「ここ、ここ」

と返事は来ます。声の方には、畑が有ります。先に述べたように、畑に入るのは御法度です。私たちは躊躇しました。

「○○、そこにいるのか」
「早く助けてぇぇ」

半泣きの声を上げています。

私たちは意を決して畑に入って行きました。畑に入ると整然と並んだ野菜、少し、鼻を突く肥料の臭い。でも見回しても、○○の姿は見えません。


「ここだよぉぉ」

声のする方には、姿が見えませんがその方角へ進んで行きました。

いました、円形の溝の縁に両手を掛け肩まで肥溜めの中に使っている○○が。

「おめえ、肥溜めに落っこちたの」
「早く、たすけてくれ」

みんな躊躇しました。誰かが、1m位の木の棒を拾ってきました。

「これに掴まれ」

みんなで、○○を肥溜めから救出しました。
救出した途端、今までの100倍位の猛烈な異臭が回りに漂いました。

「くせぇぇ」
「俺帰る」

お礼も述べず、○○は”う○こ”まみれのまま速攻で帰宅しました。彼の帰った後にはう○この足跡が転々と残っていました。

私たちは、”ここで遊ぶのよそうな”と無言の納得をして畑を出て、再び、”隠れんぼ”をしました。う○この足跡を踏まない様に。

翌日、教室に行くと教室内が異様に臭い。原因は、○○でした。

「昨日はどうだった。」
「家に帰ったらさー、母さんが家に入れてくれなく家の外で真っ裸にされて水を掛けられたよ。その後、風呂で何回も何回洗ったんだけど臭いが取れないみたいなんだ。俺は、慣れたせいか分からないのだけど。でも、この事は、内緒にしてくれよ」
「分かった」

と言いました。本当は”肥太郎”とでもあだ名を付けてからかって上げようと思いましたが、この時ばかりは余りにも可愛そうで素直に了承しました。でも教室では、

「なんか、今日臭くない」

とか女の子が言い出しています。そのうち、先生が来て授業が始まります。

「今日は、臭くないか」

すると○○の隣のが女の子が

「先生、○○君が臭いです。」

先生は、

「○○どうしたんだ」
「....」

無言です。でも、昨日一緒に遊んでいた一人が、

「先生、○○の奴は、昨日、肥溜めに落っこちました。」

クラス全員からの笑いと”ヤダー”と言う軽視の目にさらされた○○は下を向いて泣いてしまいました。
その異臭は、1週間消えませんでした。肥溜め恐るべし。

その後、その噂も収まった頃、○○に肥溜めに落っこちた時の話を聞きました。

「○○、この前、落っこちたじゃ。どんなだったの」

すると、○○は武勇伝でも聞かせるように得意になって、

「後ろを気にしながら歩いていたんだけど、いきなり、ズボ て感じで落こっちたんだ。ビックリしたよ。でも、水に落ちるのとは違って、、底なし沼に落ちてずるずる底に落ちて行く感じだったんだぜ」
「ふむふむ」
「だから、顔が沈む前に縁に手を掛けて助けを呼んだんだ」
「どんな感じだった」
「中は、ぬるぬるで暖かだった。最初は足が底が着かないし、自力で出ようとしてもびくともしなくてさ すげー怖かった。回りにはウジ虫もいるし、目はしみるし、このまま死にたくないと思った。」

とこの様な事でした。

彼の両親は最初の2・3日、ご飯を一緒に食べてくれなかったそうです。

※肥溜めとは、作物の肥料として糞尿を溜めて地面に掘ったてく穴です。ブリキの屋根が設置されていました。