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12話



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雑巾

 


「うわー、水が真っ白になったぞ」

一人の生徒が大声を上げていました。

当時の小学校では、授業が終わった後、掃除をします。モップとかはありませんから箒で掃いた後、各々雑巾を持ってお寺の小僧が本道の廊下を掃除する様にみんなで雑巾駆けをします。古い木造校舎なので床の板の一部がささくれ立っていてそれが雑巾を通して手に刺さり大けがをする様な事も起こっていました。
女の子も一緒にやっていたのでスカートをはいてきた子とかは、パンツが丸見えになります。が、巧みに男には見えないように雑巾駆けをしていました。

白い水の件ですが、みんなであれこれ原因を考えました。でも、見ているだけで原因は分かりません。とりあえず、大声を上げた生徒は直接その白い水に手が浸かった訳ですから ばい菌扱いにされ遠くに追いやられました。

「これ、牛乳の匂いがしないか」

みんなでバケツの水の匂いをかぎます。

「牛乳だ。」

白い水の犯人は牛乳でした。この時点で、一応、さっきの ばい菌扱いされていた生徒は普通の生徒に位が上がりみんなとの合流が許されます。

問題は、何故、バケツの水が真っ白になる位の牛乳が雑巾に付いていたかです。

その謎は、数日後判明しました。
その事件から数日間は牛乳付きの雑巾はありませんでしたが、ある日、一人の生徒が犯人を見つけました。その犯人は牛乳が嫌いな男の生徒でした。

当時、給食を残すことは決して許されないことでした。給食を残さず食べるまで、掃除の時間であろうと何であろうと席から移動する
事はできません。先生の許しが出るまでは下校時間になるまで残った食べ物と戦います。
その、生徒は牛乳が苦手でいつも牛乳のために残されていました。どうしても我慢できなくなって給食の前に数枚の雑巾を忍ばせ、先生の眼を盗んでは雑巾に牛乳を吸わせていました。

そういえば、白い水の事件の数日前までは給食での居残りとして残ることが無くなっていました。先生にも

「飲めるじゃないか」

と褒められていました。が、事件後、数日間居残り組に舞い戻っていました。

彼は、先生にこっぴどく怒られたのはゆうに及びません。彼は、その学年が終わるまで

「うぇ。」

と言いながら、みんなが帰る頃まで一人机に座り ちびちび飲みながら、牛乳をと戦っていました。