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2000/08/14


この話は、私の生涯の中で最も恐ろしく最も不思議な話です。

ここにでてくる友人”A”も今は普通の家庭の家長として生活しています。

子供の頃は、野を駆け川で泳ぎ大自然の中で楽しく過ごしていました。
お腹が減れば、木々になる果実やアケビなどを採って食べ、空腹を癒しました。
だけど、蛇イチゴだけは食べてはいけないと言われ絶対に食べませんでした。
蛇イチゴを食べると蛇になると言われていましたから。

ある日、友達3人で山に遊びに行きました。

「”A”に蛇イチゴ食わせようぜ。」

と友人の”B”が言いだしました。
ためらいは有ったのですが、

「おもしれぇ。」

と決行することにしました。

回りくどいことはしません。
私が、”A”の後ろから抱きつき身動きが出来ない様にします。
その後、近くに有った蛇イチゴを”B”が取ってきて無理矢理口の中に押し込みます。

「やめてくれ。おねがい」

異常なほどの嫌がりようですが容赦なく口の中に塗り込んでゆきます。

「ぐうぇぇぇ。」

私が手を離した途端、吐き出しました。

「ぎゃははは...。」

私と”B”は大笑いをしていましたが、”A”は物凄く苦しそうに嘔吐を繰り返しています。

驚きました。

「”Aちゃん”、大丈夫か」

嘔吐を繰り返すばかりです。

「医者に連れて行ったほうがいい。」

と夢中で”A”の横に付き抱きかかえようとした時、

「わぁぁぁ!」

”B”が悲鳴を上げました。
私と反対側の”A”の右腕を見ると、鱗が生えていました。
生えていたと言うより皮膚がいくつも盛り上がって鱗の形になった様でした。

「”Aちゃん”。”Aちゃん”。だ、だいじょうぶか」

声が震え、言葉とは裏腹に身体は”A”から離れていました。

「ぐぅぅぅぅ!」

と唸りながら上げた顔からは細長い舌、そうです、先っぽが二股に分かれた蛇の様な舌を出していました。
チロチロ、チロチロ舌を震わしながら私たちを見る目は、これもハ虫類の様な目玉になっていました。

”B”と2人で逃げました。
後ろを見ずに走りました。
背後に気配があります。

「ざざざざーっ」

ものを引きずる音がします。
何も考えず走りました。

町中まで走って立ち止まり、

「どうしよう」

と言うことになり、学校に行き担任の先生に”A”がいなくなったと行って一緒に山に行って貰いました。
蛇になった話などしたら信じてもらえないだろうし、もしも、信じてくれたら怖がって付いてきてくれないと思ったのでその話は伏せていました。

私とBはおっかなびっくり先生の後について行きました。
暫く、山道を登っていると上から”A”が何事もなかった様に歩いて降りてきました。
その格好は、異様で洋服がボロボロになっていました。
特にお腹の辺りがすり切れていて、

”やはり”

と思いました。

「”A”。どうした。服がボロボロだぞ。」
「何でもないです。」

私と”B”は、恐怖の余りしゃべることが出来ませんでした。
すれ違い様、”ニヤッ”と笑って、

「Bちゃん、Cちゃん。明日ね。」

と言ってAはそのまま1人で帰ってしまいました。
蛇に睨まれたカエルと言いましょうか、本当に身動きが出来ない状態になっていました。
先生がいなかったら、オシッコをちびりっていたでしょう。

それ以後、私と”B”は決して”A”と遊びませんでした。
いや、遊べなかったと言う方が正しいと思います。

それから、月日が流れ今に至っていますがAは普通の結婚生活を送っています。
私と”B”も同じです。が、今でも”A”との付き合いはしていません。(トラウマか?)

確かに”A”は蛇に変身しました。
”A”も蛇に変身したことを知っているような気がします。

それとも、私と”B”の白昼夢だったのでしょうか。



<masaoさん>