あじの干物
2000/12/21
私は元々、霊感が強い方ではないのですが一度だけびっくりしたことがありました。
それは、もう4年くらい前、彼女と伊豆へ旅行に行ったときの話です。
思いっきり観光し、大はしゃぎをし、おいしいものも食べ、へとへとになって就寝しました。
彼女は既に寝息を立てています。
私もうとうととしていた頃、部屋の空気が異様に重いと言うか何というか変な感じがジットリと漂ってきました。
何となく嫌な気がしましたがベットから上半身を起こし部屋の中を見回しました。
部屋には大きな鏡が有るのですがその前に誰か立っています。
よく見ても顔とかハッキリと見えませんが女のようです。
「誰だ!」
問いただしました(←意味無)が返事はありません。
”こりゃ幽霊だ”と確信し心臓は早鐘の様に鳴り響いています。
彼女を起こそうとしましたが何の反応も有りません。
物凄い怖いのですが、
「てめぇ、何のようだ」
と一応喧嘩を売りました。
が反応は有りません。
その時ひらめきました。
自分のバックにお守りが入っていたことを。
しかし、バックはその幽霊の近くに有ります。
勇気を振り絞って、
「待ってろよ。今、お守り出すからな。」
と脅しながら内心ビクビクで幽霊の近くまで行き目を合わせない様に手早くバックからお守りを取り出し、水戸黄門の助さんが印籠を出すように、その幽霊にお守りを拝ましました。
「きゃぁぁぁぁ〜。」
身も凍る様な断末魔の悲鳴と供にその幽霊は消えて行きました。
「思い知ったか。おめぇなんか全然怖くないんだからな」
と大声で叫んでいると、
「もぉ、何やってるの。」
眠い目を細めて彼女が起きてきました。
「今、幽霊の女が出てきたけど退治したんだ。」
と手の持っているお守りをさっきの様に彼女に拝ませながら自慢げに話しました。
「その、”あじの干物”で退治したわけ?」
手に持っているお札だと思って疑いませんでした実はおみやげ物屋で買った”あじの干物のキーホルダー”でした。
「今何時だと思ってんの。寝ぼけてないで早く寝なさい。」
と大変起こられました。
ベットに横になりながら、
「あじの干物に驚いて逃げるんじゃねぇ」
と先ほどの幽霊に怒ってみても後の祭り。
幽霊の女も怖かったですが、彼女の方がもうちょっと怖かったと実感し、先ほどの興奮と合わさってなかなか寝れませんでした。
<タチさん>