昔 話



台風の夜

2000/04/24 


我が家で唯一雨戸を閉める日、それは、台風の日でした。

当時の家は木造です。(自分の家に限らず。)
窓は、木枠で作られ障子の様にいくつもの升目状に区切られていて、その中に磨りガラスがはめ込まれていました。
このガラスは、少しの衝撃でも直ぐに割れていしまう程の厚みしか有りませんでした。
消しゴムを投げたら割れた。兄弟でふざけていて肘が当たって割れた等、良く割って怒られました。

現在だったなら、防犯上好ましくない窓ですが、この様な窓でも鍵もせず、雨戸も閉じる事なく就寝、外出していました。
確か、遠くへ出かける以外は玄関にも鍵を掛けていませんでした。
平和だったんですね。

都会では”鍵っ子”なる者がいて両親不在中のその家の子供達は紐で通した鍵を首から下げていました。
それをテレビで見て憧れました。

「俺も、鍵を持たせて」

と両親にお願いすると、鍵をなくされて入れなくなると困るので、

「駄目。」

の一言でした。
自分の祖父の家も玄関の鍵がいつも掛かっていなかったので出入り自由でした。
周り近所の家も、特に夏場などは、玄関だろうが、窓だろうが、空けぴろげでした。

それ程、戸締まりには無頓着な家でしたが台風の日だけは違いました。
台風に直撃された事はないのですがその日は大雨になります。
すると木枠の窓の下のとこから雨水が浸水してきます。
そこで初めて、雨戸を閉める事になります。
普段は締めないので窓から聞こえてくる音が違ってきます。窓ガラスの

「バシャーン、バシャーン、バチバチバチッ」

と言う音からくぐもった

「バタバタバタ」

と言う音に変わるとだんだん台風のそれらしさが実感できてきます。

台風が来る晩は、懐中電灯、ロウソク(よく停電になりました。)、水筒、お菓子、ゲーム、オモチャなどを用意し台風の来るのを待っていたものです。
台風には関係ないですが、ゲーム、オモチャは必需品でした。

大体、雨が強くなってから数時間後停電になります。
待ってましたとばかりに、懐中電灯を点けロウソクに火を灯してロウソクの明かりの下でゲームが始まります。(テレビが観れなくなるから)
普段おと同じゲームですがその時は全く違ったゲームの様に新鮮に遊べます。
お菓子を食べたり、ゲームをしたりとその日ばかりは、夜更かしができました。

普通は停電のまま寝てしまうのですが、時たまロウソクの明かりの下で遊んでいると急に裸電球が”パッ”と点く事があります。
一瞬目が眩みますがだんだんと視界が戻ってきます。
今までの幻想的な感じからいきなりに現実の世界に引きずり出されます。
すると、今までの楽しい時間も終了して、

「寝なさい」

と言うことになり、普段の生活と同じ様になりました。

今、同じ条件で台風が近づいてきても家の造りが良くなったからでしょうか余り台風の実感がありません。停電も皆無です。

楽しかったあの台風の夜が懐かしく思い出されます。





  



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